恒例の火曜日RUN/2018.07.31

恒例の火曜日RUN。
走り出した時点で30℃、けれども最早これくらいではビクともしない身体になっている。
何せ39℃を経験してしまっているのだから、これ位なら涼しく感じてしまう。

先日、パートナーの三輪えり花が、岡田正子先生の主宰するベラ・レーヌ・システムの演技教室に行く、と言うので、見学させてもらった。
ベラ・レーヌ・システムについては、下記を参照されたい。
http://live-interaction.org/Japan/bella-reine/

岡田先生は、「シェイクスピア遊び語り」を何度も観にいらしてくださり、先日の「オセロー」にもお越し頂いて、私のイァーゴを大層気に入ってくださった。
そのお礼も兼ねて見学に言って来た訳だけれども、いやぁ面白かった!
留学時に学んだ演技メソッドとの共通項もかなり多く、当時を懐かしく思い出しながら、参加者(若い方が多かった)の即興エクササイズを見ていた。

見ていて思ったのは、皆さん本当に良く考えていらっしゃる。
ただ、残念なのは、それがプラスに働かない事なのだ。
私は常日頃から、若い俳優さんたちの「考えすぎから来る持ち込み過ぎ」を指摘してきたけれども、やはり一部の俳優さんだけの問題ではない様だ。

勿論、人間と言うのは様々なものを抱えながら生きている。
何か設定を与えられた時に、その抱えているものの中から適切なものを選び出して当てはめて行くのだろう。
それは間違ってはいないと思うけれども、如何にせよ選び出して当てはめるものの量が、膨大なのだ。

人間は、感情によって筋肉を動かされ、それの動きによって表情や姿勢、更には動作が生まれ、それが観ている人に伝わる。
ただ、それらには限界があり、一度に膨大な事を伝える事は不可能である。
従って大抵の場合、ただ思うだけになってしまい、それを「心の中の台詞」として表出できずに終わる。

岡田先生がパートナーや私に「みんな色々と考えるのね〜」と仰った言葉に、その全てが込められていると思った。
やはり、表出できないものを抱え込み過ぎると、演技する事そのものがストレスになって行ってしまうだろう。
このベラ・レーヌ・システムは、ついつい思考を肥大させてしまう癖のある人に最適と言える。

私は「見学者だからどうせ何もしないで済むだろう」、と多寡を括って、気楽にエクササイズを観ていた。
けれども、それは直ぐに「甘かった」と思い知らされた(笑)。
それは、終盤に差し掛かって、最も油断していた時に起こった。

三輪がエクササイズの演技者として指名され、あろう事か、その相手役として指名されてしまったのだ(笑)。
「Oh my!!!」と心の中で思ったけれども、モジモジしてもみっともないので直ぐに腹を括った。
更に岡田先生は、エクササイズの課題を、三輪のために新たに出されたのだった。

老婆(三輪)がお茶を入れていると、突然電報が来る。
「うちに電報なんて」と思いつつ読んでみると、それはずっと昔に別れた恋人(私)からのもの。
最初は思い出せなかったものの、すぐに当時を思い出した老婆は、当時着ていたドレスや靴をはき、本当に久しぶりに化粧をする。
そうして空港へ息急き切って駆け付けたけれども、やって来た恋人は、老婆を本人と分からず、挙げ句の果てに老婆に「金髪の女性を見かけなかったか」とたずね、老婆の若い頃の写真を見せる。

「それは私」とも言えずに、老婆が口ごもっていると、恋人は「失礼」と言って立ち去ってしまう。
取り残された老婆は、打ちひしがれてその場に佇むばかり、目に入るのは自分の皺だらけの手…、時と言うものは、こんなにも残酷な側面がある。
この老婆を三輪は見事に演じ、最後にじっと佇む場面など、引っ込んで観ていた私をはじめ、観ていた参加者が涙ぐむほどだった。

教室が終わって帰途につきながら、何か大切なものを思い出させて頂いた、と言う気持ちが湧き上がるのを感じていた。

明日から始まる「お気に召すまま」の稽古にも充分活かせる、貴重な時間を過ごさせて頂いた。