恒例の火曜日RUN/2018.08.21

恒例の火曜日RUN。
嘘の様な涼しさから一転、真夏の気温が戻って来て、何だか懐かしい心地(笑)。
そのせいか、一気に秋めくかと思われた空の色も、道往く風景も、心なしか色鮮やかに映る。

先日、歌を教えている、俳優のレッスン生に受けた質問の中に、「歌に感情を乗せようとすると、どうしても力んでしまう」と言うのがあった。
実は、これについては一概には言えない(ダイレクトに感情を乗せてパワーを出すジャンルもあるので)のだけれども、「歌は台詞のスローモーションである」と言う原則を理解し、体得すれば、大抵は解決する。
これを理解していないと、感情によって瞬発的な力が働いてしまい、次に息を吸うまでそれがリセット出来ず、非常に苦しい思いをする事になるのだ。

では、具体的にどうすれば良いかと言うと、メロディのタイムラインに乗せて、ゆっくりと感情を乗せて行く練習をすれば良い。
それは、謂わゆる「テンポ読み」と言う作業が有効、実際の曲のテンポで歌詞を読み、脳を慣らすのである。
最初は、バカバカしい事に思えてしまい、中々思う様に感情が出て来ないけれども、台詞の練習だと脳が理解してくれればしめたもの、容易に感情設計が出来る様になる。

歌のための、日常のエクササイズとして、シェイクスピアの台詞を読む事は、とても有効な事だと考えている。
ロンドンのShakespeare's GlobeにあるSam Wanamaker Playhouseで観た「冬物語」での俳優たちの台詞は、今だにくっきりと耳に残っているけれども、あれはまるで音楽であった。
例えば「ヴェニスの商人」のロレンツォの台詞 ”How Sweet The Moonlight” (もちろん邦訳で)などは、オススメである。

勿論、その他にもエクササイズに適した台詞は幾つもあるので、歌おうとしている曲の曲調やニュアンスに合ったものを適宜チョイスすると良い。
上手く行けば、歌と台詞で相乗効果を及ぼしてくれる様になり、一石二鳥の効果が望める事もある。
今までの指導経験からだと、極端な早口であった俳優の台詞のテンポ感覚が、驚くほど大幅に改善された例がある。

そのエクササイズにより適した身体能力を備えるために、スロートレーニング(ゆっくりとした動作で筋肉に負荷をかける筋力トレーニング)が不可欠である。
スロートレーニングによって、ゆっくりとした動きに対応出来る筋力が養え、それに従って感情表現も柔軟になって行く。
人間は、感情表現を全身の筋肉バランスを変える事で表出しているので、その再現とも言える感情表現には、その様な身体能力が不可欠と考えている。

俳優(歌が得意な人を除いて)にとって、歌に対する苦手意識は、この感情の乗せにくさに起因するところが多いのではないだろうか。

勿論、呼吸訓練や音程訓練も大切な要素ではあるけれども、俳優が元来備えている筈の感情の再現能力をスロー化して、より良い歌唱を導き出す事は可能である、と考えている。

※「お気に召すまま」にて、スタンド花はロビースペースの関係上、全てお断りするそうです。何卒御理解、御協力の程、宜しくお願い申し上げます。